有期労働契約に関する労働契約法改正

目次

第一講座

第一講座

 

1 期間の定めのない労働契約と期間の定めのある労働契約


期間の定めのない労働契約
  
 契約期間を1年あるいは2年などと定めないで労働契約を締結した場合、 すべて期間の定めのない労働契約となる。
 定年制があるかどうかは関係がない。
 労働契約法上は、社会保険に加入をしているかなどの待遇面は関係がない。
 期間を定めたかどうか。
 基本的には企業の正社員がこれにあたる。
 期間の定めのない労働契約となれば、厳しい解雇規制が及び、原則として解雇は認められない(労働契約法16条)。
 厳しい解雇規制は、終身雇用、年功序列制度がある日本の伝統といえる。 これらの前提は崩れつつあるが、解雇権濫用の法理を確立した最高裁の考えが変わることはないと考えられる。
 最高裁の考え方は、労働契約法16条により明文化されている。
 正社員として雇えば、簡単には辞めてもらえなくなることから、使用者としては、当然、雇用調整の点からすると、避ける傾向にある。
 雇用調整のために、いわゆる非正規雇用とよばれる期間雇用が生まれる。


期間の定めのある労働契約
   
 契約期間を1年あるいは2年などと定めた場合、期間の定めのある労働契約となる。
 期間雇用、非正規雇用などといわれる。
 やはり社会保険などの待遇面とは関係がなく、期間を定めたかどうか。
 ただ、契約社員、パートなど、その雇用形態はさまざまである。
 契約期間中はやむを得ない事由がある場合でなければ解雇はできない(労働契約法17条1項)。
 これは期間の定めのない労働契約の解雇権濫用法理のよりも厳しい要件である。
 契約期間中は労働者としては、身分が保証される一方、契約期間経過後は、望んだとしても、契約の継続が保証されるわけではない。
 使用者としては、労働の必要が生じた期間だけ、雇えばよく、終身雇用を保証しなくてよく、人件費の面でメリットがある。
 また、しばしば、期間雇用は期間の定めのない労働者いわゆる正社員に比べて、待遇が悪いことが多く、この面から使用者には有利であり、不況時などには、採用したいというインセンティブが働く。

2 判例法理の理解

改正法は判例法理をもとに起案されており、判例への理解は不可欠
  判例は、期間の定めのない労働契約については、解雇権濫用法理の適用をして、厳格な法規制を及ばせる一方で(労働契約法16条は判例法理をもとに創設されたものである)、期間の定めのある労働契約については、期間満了後は終了させるという前提に立っていた。
 
 ところが、使用者が経費を削減する手段として、期間の定めのある労働契約を多用し、期間の定めのある労働契約数が増加するようになると、判例法理にも変化が見られるようになった。
 
 形式は期間の定めのある労働契約であっても、実質は期間の定めのない労働契約に該当するような場合には、解雇規制を及ぼすという姿勢である。

判例の解雇規制
  労働契約法16条によると、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされている。
  これは判例で確立した解雇権濫用法理を明文化したものである。
  この規定は、期間の定めのない労働契約に規制が及ぶ。期間の定めのある労働契約にはこの規定は及ばない。
  よほどのことがないと、従業員を解雇することができないので、解雇は原則できないと考えるべきである。 

  従業員を解雇し、訴訟を提起されたり、労働審判を起こされたりすると、結果的に会社側は解決金名目の多額の金銭を支払うことになる。

解雇できる場合とは・・
条文上の要件から検討すると
「客観的に合理的な理由」
・傷病による労務提供不能
 →早期に傷病からの回復が見込まれる場合は除く。労災による治療中は解雇できない。
〈裁判例で肯定されたもの〉
身体障害者等級1級の嘱託社員、半身不随となった保健体育教師、脳梗塞を発症し休職期間中に回復の  見込みがない場合。
 ▸ 事案に応じた判断なので、上記の事情はすべて解雇理由になるわけではない。
   また、他の要件をクリアーしなければならないことにも注意が必要。

・規律違反、業務命令違反
  →職場秩序に反する非違行為や職務懈怠も解雇の合理的理由に該当すると判断されている。
〈裁判例で肯定されたもの〉
   会社のコンピューターデータ無断消去、持ち出し、社内での暴言などを理由としたもの、取引先従業員に対し、   暴行脅迫、危険行為、暴言等を理由とするもの、部下の女性に対するセクシャルハラスメントなどである。

・能力不足、成績不良、勤務態度不良、適格性の欠如
→単に能力が足りないから、成績が悪いからという理由での解雇は認められない傾向にある。    判例はその程度が重大なものか、改善の機会を与えたか、改善の見込みがいないのかを慎    重に吟味している。
〈裁判例〉
  「勤務成績や能率が不良であることを理由として解雇する場合には、使用者においてその是正のための努力  をし、それにもかかわらず、なおその従業員を職場から排除しなければ適正な経営秩序が保たれない場合に初  めて解雇が許される」と判断したもの。
  「著しく労務能率が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならない」と判断しているものがある。
  もっとも、管理職や高度専門職等、職務が特定して採用されていた労働者が、その期待された職務遂行能力  を欠いていたような場合には、比較的解雇が認められやすい傾向にある。

・整理解雇
→経営上の理由から従業員を解雇する場合。整理解雇の4要件(要素)と言われるものがある。
① 人員削減の必要性
② 解雇回避努力義務
③ 解雇対象者選定の合理性
④ 説明・協議等の解雇手続きの妥当性の見地から解雇の有効性が厳しく吟味されることになる。
〈裁判例の傾向〉
① 人員削減の必要性については、倒産必至という状況までは必要とされておらず、経営判断は   尊重される傾向にある。
② 解雇回避努力義務については、解雇を選択する前に、残業規制、新規採用中止、配置転換・出向、 希望退職者募集などの措置をとったかどうかが検討されることになる。
③ 解雇対象者選定の合理性については、恣意的な判断を防止するために検討される。典型的 に   は、労働組合員や女性を対象とするものは合理性が否定される。また、人望や能力など恣意 的な   判断に傾きやすいものについても、合理性が否定されることがある。
④ 説明・協議等の解雇手続きについては、説明会の開催や個別面談をするなどが必要。

「社会通念上相当」

 解雇をする理由があるとしても、解雇をすることが相当かという見地から検討が加えられることになる。より軽い処分がふさわしいのではないか、他の職務に配置転換をして能力不足をカバーできるのではないかなど、解雇を回避するための他の手段があるかの検討を尽くしているか。
〈例〉
 傷病による労務提供不能のケースであれば、その従業員がもともと従事していた業務に復帰することが不可能であったとしても、他の職務に配置転換をすることで、就業が可能といえるような場合であれば、解雇が認められないということもあり得る。


「就業規則該当性」

 就業規則で、解雇事由としてどのような理由が挙げられているのかが参考にされる。通常は就業規則〇条〇号に基づいて解雇とする場合が多い。規定が必要かどうか学説上争いがあるが、解雇事由を列挙したほうが無難である。
 ただ、解雇事由を列挙したとしても、当然に列挙事由の解雇が認められるわけではない。

〈例〉
 遅刻一回で解雇すると規定していたとしても、無効である。

3 解雇についてのまとめ

 以上検討したように解雇の要件は厳しい。
 また、実際の運用は労働者保護の傾向があり、例えば、解雇の有効性がグレーの場合だと、労働者の生活保護の見地などから、労働審判などでは会社側に金銭を支払わせる場合が多い。
 さらに、訴訟構造上、解雇の有効性の立証責任は基本的には会社側にあり、やはり会社側に不利となっている。
  →リスク低減の見地からは、解雇は避けるべきである。

判例の有期雇用規制

有期雇用の規制については、雇止め法理と言われる判例法理が確立している。

〈東芝柳町工場事件〉

 「2ヶ月の期間が満了しても真面目に働いていれば解雇されることはない。安心して働いてほしい。」などと言われ、採用された期間臨時工が簡易な更新手続きで5~23回にわたって契約の更新をされたのに雇止めされたケースについて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合には、本件雇止めの意思表示は実質上解雇の意思表示にあたるので、解雇に関する法規制を類推するべきとして、反復更新を変更してもやむを得ないと認められる特段の事情がなければ雇止めはできないと判断した。

→その後、更新態様の手続きが厳格化するようになり、東芝柳町工場事件判決が指摘するような、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となるような事案は減少をしていくことになった。
 そこで、次の判例が生まれた。

〈日立メディコ事件〉

 契約期間が期間の定めがない契約と実質的に同視できない場合でも、雇用継続に対する労働者の期待・利益に合理性がある場合には、解雇権濫用法理を類推適用し、雇止めが無効となるのであれば、従前の労働契約が更新をされたのと同様の法律関係となると判断した。

雇止めの機能

 これらの規制は会社による更新拒否(雇止め)に対する規制として機能していた。

 例えば、契約期間満了の近くになり、会社が更新拒否(雇止め)の通知を出したところ、労働者から異議を述べたことにより紛争が表面化するというものである。
 雇止めが無効とされた場合、従前と同じ労働契約が継続することになる。

〈例〉
 1年単位で更新を継続していたところ、雇止めが無効となった場合、従来と同じように1年間の期間の定めのある労働契約が継続するというものである。
 期間の定めのない労働契約に転換するわけではない。
 すなわち、同じ契約期間で再度更新をされるというものである。

雇止め法理の判断要素

 更新回数、継続年数、担当業務の内容(契約上の地位が基幹性のあるものか、臨時性のあるものか)、更新手続きの厳格さ、採用時の説明、従前の実例などを考慮して、無期契約と実質的に異ならないものとなっているのか、雇用継続について期待を抱かせるものかどうかが判断されることになる。

  今回の労働契約法改正前の有期雇用の分類として、

  a 契約期間の満了によって、当然に契約期間が満了する場合(純粋有期契約タイプ)
  b 期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っていると認められる場合(実
   質無期契約タイプ) 
  c 雇用継続への合理的期待が認められる場合(期待保護〔継続特約〕タイプ)

  という整理がなされており、
 
  aの類型については、期間満了と同時に契約は終了する。
  bの類型については、解雇の規制の規定を類推適用する。
  cの類型についても、解雇の規制の規定を類推適用する。
  
  という規制が存在した。
  
  どのような場合にb、cの類型に該当するのかについては、判例の考慮要素などから、個別事案に応じて  判断をするしかない。

第二講座

労働契約法改正大解剖

改正の経緯

 日本では、長い間、終身雇用のもと、典型的には期間の定めのない労働契約(いわゆる正社員)が中心であり、そのような労働者に対して、解雇権濫用の法理による規制を及ぼせば十分であった。

 しかし、1990年代ころから、非正規労働者が増加するようになり、規制の必要性が認められるようになった。その後も、非正規労働者の割合の増加が継続し、リーマン・ショック後の不況で労働者の雇止めが相次ぐと、有期労働契約の規制を求める機運が高まっていった。

 労働団体が支持する民主党政権が成立したこともあり、政府内での各種検討を得て、今回の改正が決まり、2012年8月に成立した。

 1 有期労働契約が5年を超えて反復継続した場合の無期労働契約への転換申込権(労働契約法18条)

 (1)立法趣旨

 改正の経緯から分かるように、無期労働契約へ転換できる仕組みを設けることにより、有期労働契約の濫用的利用を抑制し、労働者の雇用安定を図ることにある。
 
 有期雇用から、無期雇用への転換を認めるもので、今回最大の改正内容である。

 かつての労働規制では、出口規制(解雇)については厳格な規制も設け、一方で、入口規制(採用)については緩やかな規制しか存在しなかった。すなわち、どのような人物をどのような形態で雇用するかについては、会社側の自由が尊重されていた。

 ところが、今回の改正は、一定の条件を満たした場合に、労働者からの申込みにより一方的に無期労働契約の成立を認めるものであり、入口規制(採用)を強化するという点で、従来の規制の枠組みを大きく変更するものである。

 (2) 無期労働契約への転換申込権

(労働契約法18条1項)

 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間(通算契約期間)が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間満了までの間に、当該満了日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなすとされた。
 
 この場合、当該申込みに係る無期労働契約の内容である労働条件は、現に締結をしている有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く)と同一のもの(当該労働条件〔契約期間は除く〕 について別段の定めがある部分を除く)とするとされている。

期間の定めのある労働契約であれば、すべて適用対象となる。

パート、契約社員の名目問わず、労働契約に期間が定められていれば、適用対象となる。
 
適用対象となるのは、平成25年4月1日以降に締結された有期契約である。

平成25年4月1日以前に反復更新され続け、すでに更新期間が5年を超えていたとしても、転換権は発生しない。

      →本条に関する紛争が表面化するのは、5年後ということになる。    

  
契約は少なくとも1回以上は更新されていなければならない。

〈例〉
 契約期間を5年と定めた労働者の場合、1回更新をした後に、労働者に転換権が発生する。
 
〈図〉
労務セミナー1.PNG
                          5年                      5年


 転換権が発生するのは、有期労働契約の通算期間が5年をこえた時点であり、実際に無期契約となるのは、その契約期間が満了した後である。                       

すなわち、1年の有期労働契約であれば、5回の更新をした後に、転換権が発生し、直ちに無期契約に転換されるわけではない。
実際に無期契約に転換されるのは、その1年の有期労働契約が満了した後である。
  
〈図〉

労務セミナー2.PNG


 労働者に申込権を認めたもので、申込みをするかどうかは労働者の自由である。有期契約を望む労働者に対して、選択権を与えたものである。自動的に無期契約に転換されるわけではない。

 そうはいっても、改正法を骨抜きにする恐れがあるので、事前に、例えば、契約を締結するときに、申込権は行使しませんという内容の、事前放棄は認められないというのが現在のところ学説の趨勢である。

 労働条件は、契約期間の定めがある部分を除き、従前と同一の条件となる。他の正社員と同一になるわけではない。ただ、後に検討するように就業規則の適用に関しても難しい問題が残されている。

有期契約の更新があっても、契約がない期間が6か月以上あるときは、その空白期間より前の有期労働契約は通算期間に含めない。このような期間をクーリング期間という。

〈原則〉
  6か月以上の空白期間があれば、それまでの有期労働契約の期間はリセットされる。

〈例〉
  1年の期間雇用があり、その後、6か月以上の空白期間があれば、転換権が認められるた  
  めには、再度5年間の雇用継続が必要となる。

〈図〉
労務セミナー3.PNG

このクーリング期間は、有期労働契約の期間が1年未満の場合には、その半分となる。

〈例〉
 有労働契約の期間が8か月の場合、クーリング期間は4か月となる。

〈図〉
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 ただ、すでに何度か更新がなされている場合は、その通算期間が基準となる。

〈例〉
 8か月の有期雇用が1回更新されている場合、クーリング期間は4か月ではなく、1年4か月が基準となるため、クーリングに必要な期間は6か月である。

〈図〉

労務セミナー5.PNG


2 判例で確立された雇止め法理の明文化 (労働契約法19条)


(1)趣旨
 これまでに判例で確立されたいわゆる雇止め法理を明文化することで、ルールを明確にし、紛争の防止を図るものである。
(労働契約法19条)

 第一講座で確認をした雇止め法理と同様の趣旨である。


(2)具体的内容
(労働契約法19条)

 有期労働契約であって以下のいずれかに該当する場合に、契約期間が満了する  日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなすとされている。

 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。



有期労働契約の形式をとっていたとしても何度も反復更新されて期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態となった場合(実質無期タイプ)、労働者の申込みにより、同一の労働契約で更新されたものとして扱われる。

 無期労働契約に転換されるわけではない。
  
 雇用継続に対する合理的期待がある場合(期待保護〈継続特約〉タイプ)の場合も、同一の労働契約で更新されたものとして扱われる。

 → 判例法理を明文化したものであるが、労働者からの申込みが必要とされている点で、   判例の要件と若干異なる。

 18条では、更新された有期労働契約の通算期間が5年をこえた場合に有期労働契約を無期労働契約に転換するものであるのに対して、判例の雇止め法理の規制はその期間までには至らないが、保護に値する労働契約に対する雇止めに規制をかけようとするものである。

〈例〉
 1年の有期労働契約が4回更新されたとする。この場合、通算期間からすると、5年に至っていないため、転換権は発生していない。使用者としては、無期労働契約への転換権を阻止するために、5回目の更新の前に雇止めをすることになるが、この場合には、本条の規制が及ぶことになる。

〈図〉

労務セミナー6.PNG


3 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止(労働契約法20条)

 (1)趣旨

 有期労働契約と無期労働契約との労働条件の格差は、契約期間だけでなく、労働条件に及ぶことが多い。例えば、無期労働契約は正社員として会社から種々の特典を受けることが多いのに対して、有期労働契約の場合にはない場合が多い。このような契約内容面での格差を是正しようとするものである。

(2)具体的内容

(労働契約法20条)

 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、その相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないとされている。

 この規定に違反した場合、その労働条件は無効とされ、損害賠償責任が発生すると考えらえている。

 学説では、明確に定まっているわけではないが、無効となった労働契約については、期間の定めのない労働契約と同様のものとなると考えられている。

 何が不合理かどうかはケースバイケースというしかない。ただ、基本給、賞与、退職金などの区別については、賃金の決定方法は労働者の能力、経験、責任などを考慮して決定されるものであり、それが直ちに不合理ということにならない。

 パートタイム労働法、労働派遣法には同種の規制が既に存在する。

(パートタイム労働法8条)
 パートタイムであることを理由として、賃金、教育訓練の施設、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取り扱いをすることが禁止されている。

(労働者派遣法30条の2)
 派遣労働者の賃金決定に当たり、派遣元は同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮することが求められている。


 今回の改正も前記の規制立法と同種の規制といえるが、これらの法律に共通していえることは、非正規雇用と正規雇用の待遇格差を解消し、均等・均衡待遇のルールを確立しようとするものである。
  
 ただ、実際、均等・均衡待遇とは何かの判断は困難を伴う。仮に同じ仕事をしており、賃金が異なっていたとしても、賃金は仕事内容だけで決まるのではなく、経験・実績・責任内容などによって変わり得るものであるからである。
 
 そのため、均等・均衡待遇に反しているだとか、契約内容に不合理な格差があるとの立証は容易ではなく、労働契約法18条の改正に比べれば、実務に与える影響はそれほど大きくない。

(3) 実務上の対応方法

 (1)契約期間が5年未満を上限として、不更新条項・更新上限条項を作る。

   
  転換権が発生しないようにするためには

  5年をこえて更新をしなければよい。

  しかし、5年を超えて更新をしていない場合であっても、無期契約と実質的に異ならない状  態となった場合や雇用継続に対する合理的期待が生じている場合には、労働契約法19条の  雇止め法理の規制が及ぶことになる。
             これらを回避するために

  不更新条項や更新上限条項を設けることが効果的といえる。

  これらの条項があることによって、契約期間が5年をこえることがなくなるとともに、雇用継続  についての期待権が失われることになるからである。

  ただ、不更新条項や更新上限条項を作成すれば、万全というわけではない。判例の雇止  め法理の適用があるかどうかについては、個別事案に応じて具体的に判断されるからである。

 裁判例を概観すると、労働者の雇用継続に対する合理的期待が発生したか、一旦発生した合理的期待がどのように解消したのか、という視点を重視している。

〈企業側の対応〉
 労働契約締結時に不更新条項や上限条項の意味を十分に説明し、労働者を納得させ、労働者が雇用継続について期待を抱かせないようにする。有期労働契約の実態を保ちながら、更新手続きを形骸化させないようにする。

 他方、ある程度契約が更新されてしまっていて、合理的期待が既に発生してしまっているケースも存在する。このような場合は裁判例を見ても、簡単に合理的期待が解消したとは認定してもらえない。雇止めに至る経緯などについて、労働者に説明をし、労働者がこれを十分に理解をしたうえで、不更新条項や上限条項付労働契約を締結したかどうかが重要である。

 裁判例では、会社が説明会を開催したり、相談窓口を設けたりしたことが会社側に有利に考慮された事案が存在しており、参考になる。

 (2)無期転換労働契約固有の就業規則を作成する。


 仮に、不更新条項や上限条項を作成したとしても、有期労働契約から無期労働契約への転換の問題が発生してしまうことは避けられない。5年を超える更新は認めないという運用をしていたとしても、更新期間が5年を超える直前に雇止め法理の適用により、契約の更新が認められた場合、転換権が発生することになる。

〈図〉

労務セミナー7.PNG

 そのため、5年を超える運用をしない会社であっても、実際に有期労働契約から無期労働契約へ転換する場合の対処をしておく必要がある。

 有期労働契約から無期労働契約へ転換がなされた場合、有期労働契約は無期契約に転換することになるが、労働契約の内容については、契約期間以外の部分については、従前どおりとされている。

ここで、難しい問題が生じる。


すなわち、
 労働契約法18条によると労働条件は従前と同じであるが、「別段の定めがある部分を除く」とされている。この別段の定めに就業規則が含まれると考えられている。つまり、就業規則があれば、労働条件が変わり得るということになる。

 有期労働契約から無期労働契約に転換した場合、転換後に適用されるべき就業規則を明確にしておかないと大きな混乱が生じることになる。

例えば、
 正社員に適用される就業規則について、無期労働契約者に適用されるとしていた場合、転換が生じた後に、転換後の契約についても就業規則が適用されるおそれが出てくる。そのため、賃金・賞与・退職金規定などの規定が転換後の労働契約内容となるおそれが出てくる。
                このような事態を避けるためには

 有期労働契約から無期労働契約へ転換がされた労働契約固有の就業規則を作成し、契約内容を明確化することが有益といえる。
 なお、この就業規則の作成であるが、転換権が発生した後では就業規則の不利益変更の問題が出てくるため、転換権発生前に作成をしておくのが望ましいと言える。
       

 (3)有期雇用を前提とした正社員登用制度を設ける。


 有期労働契約から無期労働契約へ転換することが避けられない場合、企業側としては無期労働契約に転換された労働契約の存在を前提に、制度設計をする必要がある。

 無期労働契約に転換することを一切認めないというスタンスも考えられるところであるが、前記の通り、雇止め法理の適用による更新、その後転換権の行使という事態も想定でき、この場合に紛争化するというよりは、そのような事態を見越して、あらかじめ制度設計をしておくことが有益といえる。

 従来からの無期労働者(正社員)と有期労働契約から転換した無期労働者の地位は同じではない。法は転換した労働契約の内容を正社員の地位にまで高めることは要求していない。また、例えば、整理解雇の際に、転換した無期労働者を従来からの正社員よりも不利に扱うことも許されると考えられる。

 そうすると、有期労働契約から無期労働契約へ転換した労働者の地位としては、正社員未満、有期労働契約者以上という、第三の類型の契約を認めたものである。

 企業側としては、それぞれの雇用契約の特質に応じた契約内容を定めることが求められている。

 そして、これらの雇用類型について、人材の有効活用の見地からも、有期労働契約から転換後の無期労働契約へ、さらには正社員へというような形で、契約内容の変更を柔軟に認めるようにするべきである。

 すなわち、有期労働契約で雇用したものは生涯その地位にとどまらせるのではなく、会社に対する貢献度、能力に応じて、無期労働契約に転換させたり、あるいは正社員登用試験等を設けることにより、転換後の無期労働契約から正社員の道を設けたりする方向性を検討するべきといえる。

 厳しい雇用規制の中で、企業側には厳しい対応が求められているところであるが、今回の改正について言えば、むしろ多様な人材を発掘できるチャンスととらえるべきである。


4 最後に・・・

 今回の改正は採用の自由(労働契約締結の自由)を覆すような大きな改正で、人事雇用体系の大きな変更を迫るものである。
 これにより、雇用体系の混乱をもたらし、今後の予測も難しいところがあるが、労使間の紛争が頻発することも十分に考えられ得る。
 紛争が発生してしまうと、訴訟・労働審判で高額な賠償金を支払わなければならなくなる。

 今後は、紛争を発生させた後にどのように対応するかではなく、紛争をいかに予防するかという予防法務が重要と言える。
 今回お話をしたことは一般論であり、例えば、雇止め法理が具体的場合に適用されるのかについては、専門的な判断が必要である。
 それぞれ会社の就業規則・雇用契約の内容・慣習等はすべて異なり、個別に相談するしかない。
 身近に相談できる専門家(弁護士)がいることが重要である。

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本店 外観

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