量刑について

1 量刑とは

量刑とは,法定刑を定める罰則に刑法総則を適用して定まる処断刑の範囲内で,被告人に下すべき宣告刑を決定する作業のことをいいます。

量刑にあたって考慮される要素は多種多様です。
判例によれば,刑事裁判における量刑は,被告人の性格,経歴および犯罪の動機,目的,方法等すべての事情を考慮して決定するとされています。
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一般的に,量刑を決定するにあたって考慮される事情については,以下に示す最高裁の指針が参考となっています。

量刑を決める評議の順序は,まず

①「犯行の態様(+手段,方法)」
②「犯行の結果=結果の大小・程度・数量+被害弁償」
③「動機・計画性」

といった点に着目し,これらの本質的な要素から,事件の類型を見極め,量刑を導き出します。

なお,量刑事情は,当然のことながら,被告人について犯罪事実を認定する場合に問題となってくることです。
したがって,そもそも,被告人に無罪の判決を言い渡すような場合には,量刑事情を考慮する必要は基本的にありません。

そこで,弁護人としての立場から考えた場合に悩ましいことは,無罪を主張する事案で,量刑事情についてどれだけ主張するべきか,ということです。つまり,そもそも犯罪を行っていないと主張しているのに(無罪主張),被告人が犯行を行ったことを前提とした量刑事情を主張することは矛盾するように思えるからです。

この点については,ケースバイケースなので,一概には言えないのですが,例えば,予備的な主張として量刑事情に関する主張を行う場合もあります。

2 量刑を決する各事情について

以下で,具体的に,各量刑事情について説明します。

(1)犯行そのものに関する量刑の事情

ア 犯行の動機,計画性
犯行の動機が,被告人の私利私欲を満たすためであったり,情欲に任せたものであったり,通り魔的であったりすることで,量刑が重くなります。

被害者から以前に何かをされて恨んだ末に犯行に及んだ場合や被害者に挑発されるなど被害者に落ち度がある場合と,理由もなく犯行に及んだ場合とでは量刑も異なってきます。

また,事前に十分な計画や入念な準備をして行った犯行と相手方の行動に触発されて突発的に行った犯行とは,異なります。

イ 犯行の手段,方法,態様
共犯か単独なのか,共犯の場合は,主犯(首謀者や先導者)なのか,ただ,従属的に従ったにすぎないのかが問題となります。

けん銃や包丁等の凶器を使用した場合と,素手による場合でも量刑は異なります。
当然,従属的な場合や素手で犯行に及んだような場合の方が,行為の危険性は低くなりますので,主犯の場合や凶器を用いた場合に比べて,刑は軽くなるといえます。 

もっとも,格闘家やプロボクサーなどは,素手や素足でも凶器と同じような評価をされる場合があります。素人の場合に比べて,大きな危害を与える可能性が高いわけですから,当然といえば当然のことと言えます。

さらに,犯行を加えた部位が,生命に危険を及ぼす身体の重要な部分であったり,周囲の者が止めるのを振り切って多数回にわたり執拗に顔面や腹部を蹴りつけた場合と,わずか臀部を1回蹴りつけた場合とで,量刑が異なることは当然でしょう。

ここでは身体に対する犯罪を例に挙げましたが,財産やその他に対する犯罪でも犯行の手段,方法,態様にそれぞれ違いがあり悪質であればあるほど量刑が重くなることが考えられます。

ウ 結果の大小・程度・数量,被害弁償
例えば,他人から1000万円を脅しとった場合と,100円を脅しとった場合では,刑の重さは全く異なってきます。同じことは,傷害罪などの財産犯以外の犯罪にも妥当します。例えば,傷害罪のなかでも,被害者が全治1週間であるか,あるいは全治1年であるかでは,刑の重さは変わってきます。

また,犯行によって失われた被害や損害がどの程度回復したのかと言う点も,重要な判断基準となります。財産的な犯罪(窃盗,強盗,横領など)の場合は,イメージしやすいと思います。例えば,窃盗罪の場合,被害回復や被害弁償が重視され,その物か,その物の価格に応ずる現金,さらにそれ以上のものを弁償した場合と,全く弁償せず被害の回復もない場合は,異なります。

したがって,自白している財産犯の場合,弁護人としては,被害回復,被害弁償を中心とした弁護活動を行うことが基本となってきます。

また,人命に関する犯罪で被害そのものの回復はできない場合でも,慰謝料等を金銭で支払い,特に多額の金銭を支払った場合は,被害又は損害の一部又は全部を回復させたと同視される場合もあります。
被害弁償がされた場合は,被告人に有利になります。

仮に被害者が示談金を受け取らずに被害弁償がなされていない場合でも,弁償に向けた努力,例えば法テラスや弁護士会に「しょく罪寄付」をした場合は一般的に,一定の評価を受けると言われています。

※しょく罪寄附とは,脱税,贈収賄,覚せい剤取締法違反など「被害者のいない刑事事件」や,「被害者に対する示談ができない刑事事件」などの場合に,被疑者・被告人が事件への反省の気持ちを表すために,公的な団体等に対して行う寄附のことです。
 

(2)犯行以外に関する量刑の事情

ア 被告人の性格や職業
被告人の性格からみて取れる反社会性や常習性,犯罪傾向の進行度合,粗暴性などは,量刑に影響を及ぼす事情の一つです。

被告人の年齢や経済状態,定職に就いているかどうかなども量刑に影響します。たとえば年齢が若ければ,今後,更生の見込みがあるという点で有利に作用することもあります。

イ 前科・前歴
被告人に同種の前科・前歴があれば,再犯のおそれがあるということで,被告人にとって不利な量刑事情となります。前科に関しては,刑の言い渡しが失効した後も量刑事情としては考慮されることとなっています。

ただ,交通事故の前科が窃盗事件の量刑に影響を及ぼすことはほとんどありません。(ただし,執行猶予期間中の犯行は考慮される場合があります)。

しかし,同種前科が多数あり,特に窃盗事件で10年以内に3回以上窃盗や窃盗未遂に処せられていれば,懲役3年以上の「常習累犯窃盗」に処せられます。これは,常習的に傷害事件を犯した場合に懲役1年以上の「常習傷害」に問われることと同じ理由によるものです。

常習累犯窃盗や常習傷害は,そもそも成立する罪名が異なってくるケースですが,そこまでいかなくとも,何度も同じような形態で犯罪を行っていた場合は,裁判の都度,刑が加重される場合がほとんどです。

なお,前歴は,通常逮捕歴や補導歴等を示すもので,警察でそのデーターを管理していますが,確定判決(罰金も含む)を経た前科(検察庁が管理)とは重みが違っています。

それは,証拠に基づき判決を経た前科と,警察が検挙したが判決まで行かなかった事件の重みの違いと言えます。
したがって,まず,同種前科の方が重視され,次に,同種の前歴が考慮されるということになります。

ウ 余罪
余罪に関しては,原則として,量刑事情として考慮することはできません。ただし,条件付きで,量刑事情として考慮できるとされます。

具体的には,実質上,余罪を処罰する趣旨の場合は量刑の資料とすることはできず,単に被告人の性格,経歴および犯罪の動機,目的,方法などの情状を推知する場合には量刑の資料とすることができます。

エ 反省と自白
犯行後,自身の行為について,反省し,かつ,自白していることが有利に働くことは間違いありません。被告人が否認や黙秘をすること自体は,検察官に対する対立当事者として正当な防御活動です。そのため,否認や黙秘しているという事実をもって,被告人を不利益に扱うことはできません。
 
しかし,証拠上,明白な事実に対して,悪あがきに見られるような不合理な否認・不合理な黙秘を続けた場合には,その公判廷での態度からみて取れる被告人の反省のなさや再犯のおそれを量刑上不利に考慮されることはあります。これは,否認をしたことや黙秘をしたこと自体を不利益に扱うことではありません。

公判において,どのような供述態度を示すべきか,弁護人と相談のうえ,総合的な判断をするべきでしょう。

オ 社会の処罰感情,社会的制裁,社会的影響
一般的に,社会の処罰感情が量刑事情に影響することは,否定できません。特定の犯罪に対する社会の処罰感情は時々の社会背景やマスコミ報道の程度によって変化します。

新聞やテレビで報道される事件周辺の人々や一般社会の人々の声や意見などを反映した社会の反応や影響も,量刑を決する際の判断材料となる場合があります。

また,逮捕や勾留によって会社を首になったり,有名人などが報道によって社会から無視や抹殺されたり報復を受けたりすることなどで,社会的制裁を受けている場合は,被告人にとって有利な事情になる場合があります。

社会的影響とは,凶悪犯罪などによって社会が感じる不安やこれに対する対策コストなどです。社会的影響が大きければ大きいほど,不利な情状となることはいうまでもありません。

カ その他
以上が代表的な事情になりますが,その他にも,被告人の健康状態,生活状況,保護監督者の有無,被害感情など,さまざまな要素が複合的に考慮されることになります。弁護人としては,これらの事情を,ひとつひとつ丁寧にくみ取り,裁判所に伝えて行くことに注力することになります。


刑事事件の目次はこちら

01.刑事事件は突然に 02.刑事事件の基礎知識 03.逮捕されたら
04.判決について 05.証拠の種類 06.事実認定について
07.事実はもろ刃 08.量刑について 09.仮釈放
10.刑事事件と民事事件の違い 11.裁判員制度 12.公判について
13.ご相談の流れ 14.刑事弁護費用

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